~血糖コントロールの「過去」を見せてくれる優れた指標~
HbA1cは、過去1〜2か月間の平均血糖の「記録係」のようなもので、1回の採血で長期間の血糖状態が推測できます。食後に測定しても問題がなく、日々変動する血糖値の「ぶれ」を避け、安定した評価が可能という点できわめて有用な指標です。
赤血球に含まれるヘモグロビン(Hb)は、酸素を運ぶタンパク質で、血液が赤いのはこのタンパク質の色が酸素と結びつくときれいに赤く染まるからです。
このヘモグロビンにブドウ糖が結合したものがHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)です。
赤血球の寿命は約120日、と良く書かれていますがこの数字が必ずしも正確でないことは次節で説明します。赤血球が循環している期間、血糖が高ければ高いほどHbA1cの割合は増えます。つまり、赤血球が生きている間にどれくらい「甘い環境」にいたかを示すのがHbA1cなのです。
赤血球は常に新旧が入れ替わっています。若い赤血球もいれば、寿命を迎えるものもある。この「平均化された集団」だからこそ、直近数日ではなく、1〜2か月の血糖の平均を表すのです。
さて赤血球の寿命はビオチン化赤血球の測定により正確になり、その平均寿命は80±10.9日とされています。
実際のA1cは新しい赤血球と古い赤血球内のA1cが加重平均で表されますが、80日前に生まれた赤血球は80日時間依存的にA1cが増えており(しかし量は少ないので影響は少ない)、一方生まれたばかりの赤血球はまだA1cは低い状態です(しかし量は少ないので影響は少ない)。大雑把に計算すると過去40日(赤血球の寿命の半分)を中心にしてその血糖の寄与度が高く、1−2ヶ月の血糖を反映するという感覚は正しいようです。1993年田原らはI型糖尿病の治療患者さんをサンプルとして精密に血糖とA1cの下がり具合を調べ、やはりA1cは過去1ー2ヶ月の平均血糖を正確に表しているようだ、と報告しています。複雑なモデルもあるのですが、A1cのふるまいは比較的単純に考えて良い、という扱いとなっています。